一人歩きを始めた個人情報は、ほとんどの場合、消えることなく利用されます。

今年小学校に入学した子どもに来たダイレクトメールは、中学校入学や高校入学などの節目にも、それにあった案内を届けるでしょう。

中には不幸にして事故や病気で命を落とす子どももいます。

そんなことにもおかまいなしに案内は届きます。

一か所や二か所に個人情報の訂正を求めても無意味です。

その情報は無限に散逸しています。

その子どもの年齢は、情報社会の中では止まることなく成長し、節目ごとに案内が送りつけられます。

その店は年賀状からまず住所情報を入手しました。

当然、その店はダイレクトメールの宛先としてその情報を活用するでしょう。

さらに最近の年賀状には子どもの写真を印刷し「今年5歳になります」「今春、小学校入学です」などと書かれているものも少なくありません。

この店は、どの家庭に何歳の子どもがいるという情報も手に入れます。

使い道はたくさんありそうです。


それでも一地方の小売店が入手できる情報量はそれほどのものではないかもしれません。

しかし、その店が全国展開しているチェーン店であったり、その店が入手した情報を一括して買い取る業者があったりした場合、あなたの知り合いの個人情報の一人歩きはもう避けられません。

新年早々、こんな折り込み広告がありました。

「お年玉付き年賀はがきの番号で最大7割引!!今すぐご確認ください!なお、未使用の年賀はがきは無効です」


家に届いた200枚ほどの年賀ハガキを調べてみると、2割引が12枚。

3割引が6枚。

5割引が2枚当たっていました。

この店には2割引、3割引、時には7割引にしてもつり合う、またはそれ以上の見返りがあるはずです。

いったいこの店に持ち込まれた年賀状はその後、どのように扱われるのでしょうか。


店に持ち込まれた年賀状は両面ともコピーが取られ、年賀状自体はその場で返却されます。

また繰り返し使われないようになんらかのマークも記されます。

今後も漏えい対策としては、二重三重のチェックを設けて防御するしかありません。

こうしたニュースを聞くたびに、私たち一般市民は常に被害者であるかのようですが、本当にそうでしょうか。知らないうちに加害者になってはいないでしょうか。

たとえば、電子メールの利用でのTo、Cc、Bccの誤用は、他人のメールアドレスという個人情報の漏えいになります。

「○○さんの携帯電話の番号、教えてほしいんだけど、知ってる?」

「知ってるよ。***-****-****だよ」

なにげなく交わされるこんな個人情報のやりとりが、最終的にストーカー行為に発展した事例もあると聞いています。

日本で、大規模な個人情報の漏えいが注目され始めたのは、1999年にU市で起きた20万人を超える住民情報データの流出事件でしょう。

以後も、大手都市銀行から顧客データが流出(約2万件)したり、人材派遣業者の登録社員のデータが流出(約9万件)したりする個人情報漏えい事件が相次ぎ、2005年には米国のクレジット会社で4、000万人に及ぶ個人情報が流出しました。

そうして流出した個人情報の多くが、ネット上で売買されているというのが現状です。

このように、個人情報が漏えいしたとして大きくニュースに取り上げられた事例がいくつかありますが、そのほとんどは管理者がデータを操作できる特権を悪用して他に転用したものか、オペレータの操作ミスでインターネット上に漏れてしまったというものでした。

一番望ましい方法は、書籍の主要な項目(ここでは、タイトル、著者、判型・価格、内容紹介)をテキスト文章で案内し、目次を含む詳細はWebページを設定してそのURLを紹介することにとどめます。

案内メールを受け取った人は、興味があれば自分の都合のよいときにWebページを見ることになります。

Webページではビジュアルな表現も可能です。

また、既刊書籍や関連書籍、他の新刊書籍の紹介も見てもらうことができます。

インターネットを活用した営業活動や、利用者の利便をはかった電子メールやメーリングリスト運用システム、情報のネット配信システムなどを用いた情報流通は、今後ますますさかんになっていくことでしょう。

新刊書の紹介はある程度詳細に伝えることが必要ですが、文章がほとんどの電子メールの場合、あまり長い文章は好ましくありません。

印刷物の案内では、全体を眺めて興味のあるところを中心に内容を理解していくことが可能ですが、電子メールでは、内容を画面のスクロールによって見ていく必要があるからです。


ビジネス用の電子メールでは、用件をシンプルに伝えることがマナーといえます。

電子メールによる今回の案内が適切であったかは、はなはだ疑問でしょう。

もし、HTML形式のビジュアルな表現や画像を交えた添付ファイルで送ることができれば、宣伝広告という点ではたいへんな効果を期待できます。

しかし、相手の受信環境も多様だと考えられますので、不特定多数の宛先へ送ることは迷惑メールになる可能性が高く、避けるべきです。

今回、Ccに多くのメールアドレスが表示されたことが問題になりました。

メールアドレスはユーザアカウントとドメイン名(組織情報)で構成されていますが、このメールアドレスも個人情報としての意味を持っています。


メールアドレスのリストが関連学会の公開されているWebページから作成されたことは説明しましたが、出版社からのメールにはそれが記載されていません。

したがって、お互い知らない人のアドレスを入手したことになります。

逆にいえば、受信者はその中の自分以外の見知らぬ350余名にメールアドレスを紹介されたことと等しいことになります。

学会会員リストは、学会で公開している会員情報から出版社が独自に編集したものです。

このアドレスリストの使用については、学会の了承や確認が必要です。


公開されている個人情報の目的や基準、会員がダイレクトメールを受けることも了承しているのかという問題があるためです。

デジタル情報の加工の容易さから、本人には不本意な名簿の作成や名簿の売買が問題となっています。

返信機能を使って発注書が届いた場合、一方を受注専用としておけば、2通の注文の電子メールを受けても二重発注のまちがいをさけることができます。


また、電子メール用のソフトウェアには、メールアドレスをグループ化し、そこに登録した個々の宛先(To)に単独メールを送ることができるものがあります。


Bccのヘッダも用いません。

これを用いると出版社と相手先との間だけに対するメールとなり、一括の同報通信と比べ印象もよいでしょう。


この場合、電子メールの返信機能Reply-Toを用いたときでも、本来の送り主であるFromに記述された先へ返事が届きます。

宛先の設定はBccを用いた同報送信を行うのも一つの方法だったといえます。

この場合、案内したい学会会員リストの個人メールアドレス情報は漏れることはありません。


ただし、このメールを受け取った人は、どのような方法によって自分の電子メール宛に案内が来たのかがわかりません。

ここでは、宛先にBccを用いていることと、どこからメールアドレスを入手したかの説明が必要です。


Toがないと送信できないメールソフトの場合には、便宜的に自社の発信者のアドレスを入れておくのがよいでしょう。

ただし、Fromとは違う宛名がよいでしょう。

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